とことん極める
2000年代初頭にオートバックスが開発したスポーツカー「ガライヤ」のレストアプロジェクト。第2回ではベース車両に立ちはだかった課題をお届けします。
かつてのポテンシャルを取り戻し、再び公道を疾走させる――。
そんな目標のもと、2025年1月に発足した伝説のスポーツカー「ガライヤ」のレストアプロジェクト。
連載第1回「伝説のスポーツカー復活プロジェクト!ベース車両に隠れていた課題、そして『レース屋』が仕切り直しを決断した理由」では、ベース車両となった個体に深刻な破損が見つかったこと、そして別の個体が新たなレストアベースとなったことをお伝えしました。
今回は、レストアの作業にまつわるエピソード(メカニズム編)をお届けします。
▲レストアを担当したゴードンミラー社 顧問の田沼良之氏(画像左)とメインメカニックの甲斐一誠氏(画像右)
甲斐:ただ、赤色のガライヤについては少々、困ったことがありました。ボディとモノコックを分解しようとしたところ、防振のためのシーリング剤が固まって、分解ができない状態になっていたのです。
マニュアル(仕様書)にはシーリング剤の記載はなく、シルバーの個体にも使用されていなかったので、「そんなの聞いてないよ」という気持ちにさせられましたね。シーリング剤は完全に固まっていて、うかつに手が出せない状態でもありました。
田沼:固まったシーリング剤のこともあり、赤色のガライヤはボディを外すと壊れるおそれがありました。
そこでボディとモノコックは分解せずに作業を進め、メンバーなどの部品はシルバーの個体から移植することにしたわけです。
▲ホイールアーチ内に見えているのがリアメンバー。このシルバーのガライヤのリアメンバーは外され、赤色のガライヤに組み付けられている(写真:Naoto Sakamoto)
甲斐:ガライヤはエンジンを下ろす(外す)だけでも、リアメンバーを外さないといけない構造です。
今後のメンテナンスを考えると、シルバー(の個体)のメンバーを移植するのがベストでした。
▲製造元が不明だったサスペンションはアペックス製と判明
甲斐:そのほかにも、このガライヤのレストアをきっかけに、嬉しいことがありました。
――嬉しいこと、というと?
甲斐:2025年8月に富士スピードウェイで開催された「GC Returns」というエキシビションレースに、あるチームのメカニックとして参加しました。
そうしたら別チームのピットに解良(かいら)さんがいらっしゃって、ガライヤの件もあったのでご挨拶をさせていただいたんです。
レストアの話をすると、喜んでくださいました。
▲エアコンが動かないことの原因究明は、甲斐氏にとって一番、思い出に残った作業だという
甲斐:特にエアコンが動かないことの原因究明は、難航しましたね。一つひとつを確認しながら、原因を特定していきました。
ハンドメイドのクルマの難しさ、と言えるかもしれません。とにかく骨が折れる作業でした。、
田沼:結局、直ったんだっけ?
甲斐:おかげさまで。原因も判明し、ちゃんと冷風も出るようになりました。
田沼:エアコンや電装の配線の件もそうですが、初期の試作型の黄色の個体から赤色の個体、そして市販車に近いシルバーの個体への移り変わりを目の当たりにして、「レーシングカーを市販車にするのは、とても大変なことなんだな」と、あらためて感じました。
▲少量生産のスポーツカーだけあって配線ひとつとっても個体により異なることがわかった(写真:Naoto Sakamoto)
甲斐:シルバーの個体と赤色の個体の違いといえば、作業をしているときに、運転席のドアが突然、閉まらなくなってしまったこともありました。
田沼:そうそう、そんなこともあったね。
――あの特徴的なシザーズドアですか?
▲ランボルギーニのように上に向かって開く「シザーズドア」もガライヤの特徴だ(写真:Naoto Sakamoto)
甲斐:そうです。ドアを閉めても固定されず、開いてしまうんです。ドアロックを取り出して確認すると、プラスチック製のラッチが破損してストライカを掴めていない状態でした。
田沼:製造から20年以上も経っているプラスチックです。ドアを何度も開け閉めしていれば、壊れるのも無理はありません。
甲斐:それで、シルバーのガライヤから(移植するために)ドアロックを取り出したのですが、こちらのラッチは耐久性の高い金属製だったんです。
田沼:レーシングカーならドアロックは一戦だけ持てばいいし、走行に関係ない装備の整備性は二の次です。もしガライヤの市販化に向けた改修がもっと進んでいたら、整備性が改善されていたかもしれませんね。
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