とことん極める
2000年代初頭にオートバックスが開発したスポーツカー「ガライヤ」のレストアプロジェクトがスタート。全5回の連載で全貌をお届けします。
オートバックスは、「東京オートサロン2026」でオレンジの「ガライヤ」をお披露目しました。
「ガライヤ」は、かつてオートバックスが開発したスポーツカー。今回、お披露目したガライヤは、クルマの楽しさを伝えるシンボルとして、現代風にレストアしたものです。
▲オートバックスのカラーであるオレンジ色&ブラックルーフでよみがえった「ガライヤ」。当時のエンジンをそのまま使ったガソリン車だ。
この連載「ガライヤ・レストアプロジェクト」では、レストアが完了するまでの過程をお届けします。
第1回で取り上げるのは、ベース車にまつわるエピソードです。
ゴードンミラー社は、オートバックスセブンが展開するプライベートブランド「GORDON MILLER」をファトラスタイリング社へ事業統合したことを機に、社名変更して2025年4月に誕生した会社です。
ファトラスタイリングは田沼良之氏が代表取締役を務めていた会社で、エアロパーツ(ボディキット)やフルバケットシートの製作と販売、車両のレストアを中心に事業をスタート。現在は、ガレージブランドとしてオリジナルアイテムの製作、販売も手がけています。
▲ゴードンミラー社で顧問を務める田沼良之氏。専門はデザイナーで、かつてファトラスタイリング社で販売していたキットカーやエアロパーツのデザインを手がけてきた
――まずはゴードンミラー社におけるレストアの定義を教えてください。
田沼:ボルトの1本までバラせる(分解できる)ところは徹底的にバラし、再利用できる部品は綺麗に磨く。利用できない、あるいは不足の部品を調達し、本来の姿に丁寧に組み直すことです。
甲斐:具体的には、ただ走行できる状態にするだけでなく、その車両が本来持っている性能を発揮し、各機能が問題なく稼働する状態にまで整備することですね。
▲メインメカニックの甲斐一誠氏。スーパーメカニックとして、多くのレーシング車両の整備を受け持ってきた
田沼:今回、レストアに使用した部品取り用のガライヤは3台あり、それらすべてが最初から走れる状態でした。ただ、本来の性能からはほど遠く、安全性にも問題がありました。
――1台のガライヤをレストアするために3台も!?
田沼:当初は1台だけをお預かりしてレストアする予定でしたが、結果的には3台になりました。その辺りは、おいおい、お話ししましょう。
――実際にレストアのプロジェクトが始動したのは、いつごろなのでしょうか?
田沼:2025年3月にシルバー(ボディカラー)のガライヤが入庫しました。もともとは富山県にあるカーショップが所有しており、再びオートバックスに戻ってきたものだと聞いています。
▲入庫後、レストアのためにバラされたシルバーのガライヤだが・・・(写真:Naoto Sakamoto)
――そのシルバーの個体にレストアを施すことになった理由はありますか?
田沼:車検証があり、直前まで走行していたのが一番の理由です。今回は、公道を走行できる状態にすることが、決まっていましたから。
公道を走るためには、車両のコンディションだけでなく、法規的な問題もクリアしなくてはなりません。予算も時間も限りがある中、車検で余計な手間をかけたくありませんでした。
甲斐:入庫したシルバーのガライヤは走行可能な状態で、簡単な整備だけで、運輸支局に持ち込んで車検取得できました。このままスムーズにレストアを進められるだろうと、私も田沼も楽観視していたのですが……。
――そうはうまく事が運ばなかったと……?
甲斐:レストアのためにクルマをバラしてみると、エンジンのコンディションが想像以上に悪くて……。完調に戻すには、いくつもの大きな難関をクリアしなければならないことが判明しました。
――具体的には、どこが悪かったのでしょう?
田沼:ひとつは、エンジンマウントにクラックが入っていたこと。また、当初はガスケットだと思っていたエンジンオイルの漏れの原因が、実はエンジンブロックのクラックだったという深刻な状況にありました。
▲シルバーのガライヤから降ろしたSR20VE。現在では希少なエンジンで、コンディションのいい個体の購入は極めて難しい
田沼:ガライヤに搭載されている日産のSR20VEエンジンの供給は、すでにストップしています。中古での購入も検討しましたが、タマが少ない上に、あまりにも価格が高騰しており、現状の予算では手が出せませんでした。
その他、ウェザーストリップといった消耗品も、専用の製品はありません。近い製品を購入し、試行錯誤で形状を整えて組み付ける必要があり、これにも時間とお金がかかりました。
▲シルバーのガライヤは紫外線や塩害により、ボディのコンディションも悪かった
田沼:シルバーのガライヤをバラしたことで、レストアにかかる費用をあらためて算出できたのですが、その額は当初の予算の数倍に上りました。
――それは……とてもレストアを進められる状況ではありませんね
田沼:その通りです。よって新たに(ボディカラーが)赤色と黄色、2台のガライヤを入庫し、その部品を取って進めることにしました。
甲斐:入庫後、この2台をざっと調べたところ、どちらもシルバーの個体と比べてコンディションはいいものの、マニュアル(仕様書)との違いが多く見受けられましたね。
――それはどういうことでしょうか?
田沼:赤色と黄色のガライヤは、シルバーよりも早く作られた個体のようで、少し仕様に違いがありました。特に黄色はさまざまな部分がシルバーの個体と違い、最初期に作られた試作車のような車両のようでした。
また、調べているうちにわかったのですが、赤色のガライヤには予備検査証がありました。これはとてもラッキーなことで、すぐに車検を取得することができました。
そこで、ボディやエンジンのコンディションが良好であったこと、予備検査証があったことを決め手として、赤色のガライヤをベース車両に変更し、レストアのスケジュールを仕切り直すことにしました。
▲多くのデータを提供したシルバーのガライヤは、あらためて部品取りとして活用された
ある程度、レストアの進んだシルバーのガライヤに見切りをつけ、部品取りに迎え入れた赤色のガライヤをベース車両にすると決めた田沼氏と甲斐氏。
続くレストア作業で二人がぶつかった、“市販車を目指したレーシングカー”ならではの新たな壁とは……?
【#02】へ続く
取材・文:糸井賢一
写真:飯島隆
編集:西村友香理、木谷宗義/type-e+ヒャクマンボルト
<連載:ガライヤ・レストアプロジェクト>
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