とことん極める
2000年代初頭にオートバックスが開発したスポーツカー「ガライヤ」のレストアプロジェクト。第3回ではいよいよ生まれ変わった姿をお届けします。
伝説のスポーツカー「ガライヤ」を再び公道で走らせるべくスタートした、ガライヤ・レストアプロジェクト。レストアが完了したガライヤは「東京オートサロン2026」にてお披露目されました。
レストアプロジェクトの一部始終をお伝えするこの連載では、ゴードンミラー社で顧問を務める田沼良之氏と、メインメカニックの甲斐一誠氏へのインタビューを中心に、ガライヤ復活までの道のりをお届けします。
第3回のテーマは「内外装」です。
▲レストアを担当したゴードンミラー社 顧問の田沼良之氏(画像左)とメインメカニックの甲斐一誠氏(画像右)
――前回はエンジンや電装、足回りのお話をうかがいました。外装や内装に関しては、どのようなレストアを行ったのでしょうか?
田沼:外装は主にオールペンと、ゴム製パーツの交換ですね。ウェザーストリップをはじめとしたゴム類は、交換しようにも純正はもちろんアフターメーカーによる補修部品もありません。外したパーツを確認して近い形状のパーツを購入し、形状を整えて装着します。
――言葉だけで聞くと、簡単そうに思えますが……。
田沼:とても根気のいる作業です。例えばウェザーストリップはサイズの異なるゴムを5種類以上、購入し、何度もクルマにつけてはドアの閉まり具合を確認する作業を繰り返しました。
ガライヤの素性はレーシングカーと言っても良い作り方の車で、つまり手作りの要素が多く、ボディやドアなども個体差があるようです。
▲ドアの開口部に、ぐるりと施されるゴム製パーツが雨水や風の浸入、振動音を防ぐウェザーストリップ
田沼:例えばシザーズドアとボディとのすき間が運転席側と助手席側で均一ではなく、同じウェザーストリップを装着しても、運転席側ではドアの閉まり具合が違ってきれいに閉まらないため、雨漏りしてしまうんです。
一方、助手席側は厚みが邪魔してドアが閉まらないなんてこともある。ゴム製のパーツを使っているすべての箇所で厚みや形状の調整が必要で、、とても手間がかかる大変な作業でした。
――簡単そうだなんて言ってしまって、申し訳ありません……。
田沼:一応、シャワーテストで問題は出なかったのですが、実際に雨天時に走行したら、どうなるかはわかりません。今後も、いろいろと調整する必要が出てくるでしょうね。
▲センターコンソールの運転席側に新設された、ヒューズボックスへのサービスホール
甲斐:内装とは少し違いますが、ガライヤのヒューズボックスはセンターコンソール内にあり、ヒューズを交換するにはダッシュボードとセンターコンソールを外すなどの手間をかける必要がありました。
今後のメンテナンスのため、センターコンソールにサービスホールを設け、ヒューズボックスへのアクセスが容易になるよう加工しました。
――レストア終了後の調整やメンテナンスについても考えてらっしゃるのですね。
──シートについては、どのように対応したのですか?
田沼:赤色のガライヤは内装の程度もよかったため、基本的には綺麗にしただけです。シートは表皮のビニールレザーが劣化していたので、新たに貼り替えたシートと交換しました。
▲シートの張り替えは、ゴードンミラー社の得意とする作業のひとつ
――新シートはとても格好良くて、素敵な出来栄えですね。表皮はビニールレザーに見えませんでした。
田沼:張り替えたシート表皮は、ファッション系のデザイナーの方にデザインしていただきました。素材はアルカンターラを用いています。
この素材をシワなく、綺麗に張るには技術が必要で、専業にしている私どもですら3~4回ほどやり直しました。そのおかげで、納得のいくシートができたと思います。
余談ですが、このシートの中身はシルバーの個体のもので、赤色の個体のシートはオリジナルのまま保管してあります。
──ボディについては、どのようにレストアしたのですか?
田沼:新しいボディカラーは、オートバックスのイメージカラーであるオレンジを基調にし、ルーフ部をブラックとしました。
▲最初からボディカラーはオレンジだったかのように、隅々まで丁寧にペイントが施されている
――レストアに伴い、どこかアップデートはしたのですか?
田沼:いえ。ガライヤを「本来の姿に戻す」のが私たちのレストアですから、特別なアップデートは施していません。とはいえ、さすがに20年前のタイヤを使用するわけにはいかないので、(タイヤは)最新のものに変更しました。
▲ガライヤのタイヤサイズはフロント215/40R17、リア255/40R17。ちなみに入庫時に履いていたタイヤはミシュランの「パイロットスポーツ」だったそう
――今後も何か作業の予定はあるのでしょうか?
▲レストア作業を振り返る田沼良之氏
田沼:いろいろな環境で実走を繰り返し、出てきた問題に対してのメンテナンスとセッティングの繰り返しですね。
――ありがとうございます。最後に、読者のみなさまにお伝えしたいことはありますか?
田沼:ガライヤは20年前だからこそ、市販化を目指して作ることができたクルマです。このレストアではネガティブな部分も出てきましたが、それはレーシングカーを市販化するために挑んだ証でもあります。
とてもすごいことに挑戦したクルマです。レストアしたガライヤを通じて、製作や市販化に向けて関わった皆さんの熱意を感じていただけたらと思います。」
多くの難関をクリアし、本来の姿と性能を取り戻したガライヤ。
続く第4回目では、レストアが完了したガライヤの新しい姿を中心にお届けします。
取材・文:糸井賢一
写真:飯島隆
編集:西村友香理、木谷宗義/type-e+ヒャクマンボルト
<連載:ガライヤ・レストアプロジェクト>
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